最近、レストランのメニューやショップで当たり前のように目にする「ナチュラルワイン」。
しかし、それは「体にいいもの」「独特な香りがするもの」「ルールがないもの」と、
イメージがバラバラです。
今回の奈良ワイン会では
そんな曖昧な言葉の輪郭をはっきりさせ
ワインの背後にある「思想と技術」を紐解きました。
正直とても炎上しやすいテーマです。
でもあえてそこに切り込むのは
「ワインや生産者の事を正しく理解してほしい」という
えいじさんの看過できない想いがあったから。(だと勝手に思っています)
いったいどんな会になったのでしょうか。
早速行ってみましょう。
ちぇけら。
ナチュラルワインとは?
乾杯 フランス×ロワール地方×瓶内二次発酵
La Baleine / Saumur Brut NV
難しい話に入る前にまずは乾杯しましょうという事でこちらのワインで乾杯。
せっかくですからえいじさん作成の農法と醸造に関する情報も載せておこうと思います。

2010年から有機栽培(2013年ビュロー・ヴェリタス認証)、2014年よりビオディナミ(2017年デメテール認証)
ステンレスタンク発酵(20℃)、残糖が22g/ℓになった時点で発酵を停止して瓶詰→瓶内二次発酵。10~36か月間瓶熟成、デゴルジュマン。ドサージュ無し。SO2無添加。
難しい事は分かりませんが(おい!)
ロワールらしくシュナンブラン主体でリンゴや洋ナシのような香りでとても美味しいワインでした。
混同しやすい「3つの言葉」を整理する

まずは、よく混同される「オーガニック」「ビオディナミ」「ナチュラル」の違いを整理しておこうと思います。
* オーガニック(有機栽培):「土壌の再生」

化学肥料や農薬に頼らず、土の生命力を取り戻す「栽培」のルールです。

法的な「認証」が重要で、認証があって初めて名乗れる実務的な側面もあります。
* ビオディナミ:「自然との調和」

オーガニックを一歩進め、月や天体のリズムに合わせて農作業を行う哲学的な農法です。

「病気になったら治す」のではなく「病気にならない強い個体(畑)」を作る、いわば予防医学の発想です。


* ナチュラルワイン:「テロワールの表現」

栽培だけでなく、醸造(造り)まで含めた概念です。

目指すのは、土地の個性(テロワール)に「余計なフィルターを通さない」こと。

2杯目 フランス×ジュラ地方×シャルドネ
Eric et Berengere Thill / Côtes du Jura de Marne et d’Argile 2022


2012年から有機栽培(2015エコセール認証)、2020年からビオディナミ(2021年デメテール認証)ステンレスタンクで発酵後、90%をステンレスタンクで、10%をブルゴーニュのサン・トーバンで使用した228L樽で18ヶ月間熟成。亜硫酸は瓶詰時に38mg/L
僅かに酸化熟成のニュアンスがあってジュラらしさを感じさせるワインでした。
なんか今日のラインナップの中で一番酸化したニュアンスだったのに、
唯一SO2を添加しているという不思議。
ほんのりスパイシーさというか苦みが残る感じが柑橘の皮を思わせる感じがして好きなワインでした。
料理 カンパチのカルパッチョ 発酵塩レモンのソース

そんなジュラのシャルドネに合わせた一皿目がカンパチのカルパッチョ。
今回は特定の地域がテーマじゃないこともあって、
コム兄的に勝手に裏テーマをもって臨みました。
その名も「あけおめ感」
年明け早々という事もあるし、今年も皆さんが元気に活躍できる年にして頂きたいという思いも乗せました
(昔から思いが重いタイプです←)
今回はカンパチを使いましたが、本当は出世魚の鰤を使いたかったんですが
脂が凄すぎて、くどくなってしまいそうだったので断念しました。
新年感にしては心もとないですが添え物の蕪を紅白にしてみました。
白には無病息災、赤には厄除けの意味が込められているそうです。
出世はできないかもしれませんが、厄除けはこれでばっちりですねw
今回使いました赤蕪はモモの助という品種のサラダ用の蕪。
皮がペロって剥けて気持ち良いんですよね。

少ししんなりさせるために薄めの塩水に着けたんですが、
美味しくなーれという気持ちを込めて昆布を忍ばせておきました。(あんまり意味無いけどw)
今回のペアリングの肝は何といっても塩レモンのソース。
今回は2週間発酵させて作った発酵塩レモン。
興味ないと思いますが念のため作り方をシェアしておこうと思います。
材料はレモン、塩(レモンの重量の10~15%。長期保存なら20%とかでもいいかも)
ノーワックスのレモンをよく洗って櫛型あるいは輪切りにカットします。
熱湯消毒などを済ませた清潔な瓶に塩→レモン→塩・・・の順に重ねて入れます(最後に塩で終わるといいと思います)
翌日には浸透圧で水分が出てきますので瓶を振って塩が全体になじむようにします。
直射日光に当たらない常温で保存し、1日に1回程度瓶を上下に振ってください。
なんか分かりませんけど3日目くらいから愛着が湧いてきて可愛く見えてきます。
10日を超えてくると液体化に少し濃度が付いてきます。
この位の時期には瓶口に鼻を近づけるとコーラみたいな香りがして嬉しくなりますが、やたら滅多に開けないでくださいね(そんな奴いねぇよ)
そして発酵させたレモンを絞って、出てきた液体とを混ぜた状態がこちら。

なんとなーく濃度が付いているのが伝わるといいのですが、今回は皮も一部刻んで使いました。
塩分濃度は結構強いのでかけすぎ注意ですが唐揚げとかにかけてもサッパリと食べられていいかもしれませんね。
という事で完成したのがこちら。

説明を聞いたからか初めに見た時よりもおいしそうに見えてるんじゃないでしょうか。(知らんけど)
シャルドネのほのかな苦みとソースの熟成感とホロ苦みが良い相性だったように思います。
「何もしない」のではなく「何をしないかを選ぶ」という覚悟

ナチュラルワインは、決して「放ったらかし」で「自然に(勝手に)」できるものではありません。
むしろ、通常のワイン造り以上に、緻密な計算と手間がかかっています。
ここが今回の講義で最も熱がこもったポイントかもしれません。
酸化防止剤(亜硫酸/SO₂)との向き合い方
通常、ワインの酸化や雑菌繁殖を防ぐためにSO₂は不可欠です。
それを使わずにクリーンな味を目指すには、
腐敗した粒を一つ残らず取り除く「究極の選果」や、
一分一秒を争う「温度・酸素管理」が求められます。
ハッキリ言って狂人の域です。
趣味程度に1本や2本分作る分には可能かもしれませんが。
人為的な添加物やフィルター処理(濾過)という工程を削ぎ落とすのは、
ごまかしのきかない「真剣勝負」。
”真の”ナチュラルワインとは、造り手の高度な技術と
絶対にテロワールを表現するという覚悟の結晶なのです。
3杯目 オーストリア×ブルゲンラント地方×ブラウフレンキッシュ
Heinrich / Naked Rosé 2021


2006年からビオディナミ(デメテール認証)房のまま手で収穫しすぐに圧搾。一部は数時間のスキンコンタクト。土着酵母による醗酵、MLC。5か月間アンフォラにて澱とともに熟成。フィルターをかけずに瓶詰。SO2無添加。
ラズベリーやクランベリーなどのフレッシュでジューシーな酸。
ほんのり感じる優しいタンニンと塩っぽさ。
軽いだけのカジュアルなロゼではなくて芯があるから色んな食事に合わせてみたいなーって思うワインでした。
4杯目 フランス×ジュラ地方×サヴァニャン
Domaine de la Pinte / Sav’Or 2024

ステンレスタンク(土着酵母)にて醗酵。15日間のマセレーション(軽くルモンタージュ)、空圧式圧搾、主醗酵後100%マロラクティック醗酵ステンレスタンクにて7か月熟成。SO2無添加。
エキゾチックさやスパイス感を感じる香りで、ピュアでありながらとても複雑で芳醇なワインだと思いました。
コクと酸味のバランスもとても良かったと記憶しています。
サヴァニャンさん、おいしかったなぁ。
料理 根菜とコンテチーズのグラタン
ジュラとか聞いたらやっぱりコンテチーズを使いたくなるんですよね。
独特のナッツのような香りとコク。
好きな人も多いんじゃないでしょうか。
という事でコンテをたっぷり使ったグラタンにすることにしました。

キノコとベーコンと玉ねぎを使った旨味を凝縮させたのってシンプルですけど美味いですよね。

でも2品目から「あけおめ感」が消失しかねない大ピンチですが、そこはコム兄考えました。
(こじつけではないですからね。決して。)
「将来の見通しが良いように」との願いが込められた蓮根、
鱗片が幾重にも重なっている姿から、「家族の結びつき」や「繁栄」を表す百合根、
親芋に小芋がたくさんつくことから、「子だくさん」「家系の繁栄」を願う里芋。
といった縁起のいい根菜たちをたくさん使いました。
里芋にはぬめりがあるので縁をつなぐっていう意味合いもあるそうです。
結果的に色んな食感の根菜たちが良いアクセントになって美味しいグラタンになったと思います。

コンテは12か月熟成のものを使用しました。
すりおろしたものを全体に振りかけて、角切りに切ったものを最後に散らしてアクセントとしました。

アクセントにするも何も、提供するタイミングには溶けちゃって分からなくなっちゃいましたが
それはそれでよしという事で。
ワインのナッティーな感じと芯のある酸味が良い感じに交わっていたように思います。
根菜の色々な触感と土を思わせる素朴な香りもよかったように思います。
どうでしょうか。(何が)
4. フランスで誕生した新基準「Vin Méthode Nature」
これまで「自称」でしかなかったナチュラルワインの世界に、
2019年、フランスで「Vin Méthode Nature(ヴァン・メトード・ナチュール)」という公的な定義が誕生しました。

*有機認証を受けたブドウを100%使用すること
* 手摘み収穫であること
* 土着酵母のみで発酵させること
* 添加物を使用しないこと
などなど。
こうした明確な基準ができることで、崇高なモチベーションでワインを造る生産者にとっても良いですし、
私たちが消費者にとっても
「どんなワインが自然派に当てはまるのだろうか」
というのが一目瞭然となり、
個人個人で曖昧だった”ものさし”が統一されて良いですよね。
5杯目 フランス×ボルドー地方×メルロー&カベルネ・フラン
Domaine Jean-Yves Millaire / Lupéou Rouge 2022


2006年から有機栽培。ビオディナミに転換。土着酵母を使用しコンクリート・タンクで3日間のマセラシオン。発酵の途中で果皮を抜き取り、果汁は発生する炭酸ガスによって保護される。フレッシュな果実味を残すため年内に速やかに瓶詰めされる。SO2無添加。
香りにはブルーベリーヨーグルト感があったように思います。(鼻がバグってたかも)
ほんのりスパイスを感じるけどフレッシュでフルーティーな感じのワインだったように思います。
ボルドーのワインで年内に瓶詰めするってすごいスケジュールですよね。
これまでの一般的な”ボルドーらしさ”ではなく、まさに”生産者が求めるワイン”を造るための工程。
これもテロワールの表現の一つなんでしょうね。
ワイン面白い。
6杯目 フランス×ローヌ地方×グルナッシュ&シラー
La Martinelle / Ventoux 2022

2001年設立当時から有機栽培。エコ
セール認証。
全房比率30%。コンクリートタンク
にて主醗酵(土着酵母)後、12か月
間コンクリートタンクにて熟成。さ
らに12か月間瓶内熟成。SO2無添
加。
グルナッシュ、シラー、ムールヴェードルというこの地域では定番のブレンドですね。
赤い果実の香りが中心でとても口当たりが柔らかくて透明感のある果実味と優しいタンニン。
飲みやすいけど軽いだけではなくて奥行きもあって美しい南ローヌのワインだなぁと思います。
比較的価格帯も優しめですので是非挑戦してもらいたいワインの一つですね。
7杯目 フランス×ボージョレ地方×ガメイ
Marcel Lapierre / Morgon 2023

1981年から有機栽培。2004エコセー
ル認証。
収穫時は房に傷がつかないよう小さ
な籠を使う。厳しい選果。ブドウは
冷却され房のままタンクへ。セミ・
マセラシオン・カルボニックから主
醗酵へ。醗酵および熟成中は常に温
度、密度、微生物活動を毎日検査し
て状態を確認。216L樽で9か月熟
成。SO2無添加。
熟したチェリーやラズベリー、ほんのりとスパイス感がある香り。
活き活きとした酸味とちょっとだけ土っぽい香り。
とってもエレガントで洗練されていて、ハッキリ言ってガメイと聞いていてもはホンマに?と思ってしまう液体。
マルセルラピエールといえばナチュラルワインの金字塔的な存在としてコム兄も知っていましたが
飲むのは今回が初めまして。
なんか果実の輪郭がパキッとではなく柔らかく映し出されているように感じました。(コム兄比)
8杯目 フランス×ボルドー地方×メルロー
Château Poupille / Poupille Atipique 2016

有機栽培(AB認証)
最良の年のみ生産される最上キュ
ヴェ。コンクリートタンク(天然酵
母)にて主醗酵後、オクソラインを
使用してフレンチオーク樽にて28カ
月熟成(225L、新樽比率100%)、さら
に瓶熟成12カ月。SO2無添加。
ブラックチェリーやプラム、ドライハーブや鉄っぽさ。
ザ・ボルドーのええやつ熟成させましたっていう香り。
アティピックっていうのは型破りとか異例という意味合いのようです。
これはボルドーイコール樽熟成っていう常識を覆すっていうメッセージなんだそう。
事実、樽のニュアンスが控えめな分果実の強さ(品質の高さ)が前面に出ていたように思います。
なんかクラシックな良さは踏襲しつつ、薄化粧でも勝負できる素材ありきのワインだなぁーって思いました。
メッセージの受け取り方としてコム兄の勘違いだったらごめんなさい。
なんしか、くそ美味かったです(語彙)
料理 鴨のロースト ポルトとカシスの赤ワインソース
赤ワインのセクションに合わせた料理がこちらの鴨料理。

赤ワインの種類が多かったので、それぞれ違った表情が現れるような料理にしたいな。
と思ったりしたわけです。それでいて「あけおめ感」も忘れずにってな感じで。

この時期にしかあまり見ることがない金時人参ですがやっぱり縁起が良さそうですし、
なんか可愛いサイズのものを見つけたので思わず買ってしまいました。
キレイに洗って、皮付きのままじっくりオーブンで火入れしました。

油断して焼き過ぎたのは内緒ですが、皮を残しておいたので必要以上に水分が抜けずにすみました。(こら)

そして好き嫌いがはっきり分かれるでお馴染みの黒豆煮。
これも正月感を出すのには持ってこいですし、コム兄的に赤ワイン良い相性だと思っています。
なので意外性と正月感を狙って躊躇なく添えました。(黒豆嫌いな人ごめんなさい)

鴨はシンプルにロースト。
欲を言えばもう少し脂を出し切ってパリッと仕上げたかったですが、まぁそれはそれとして。

ソースは赤ワインとフォンドヴォーをベースにポルト酒を加えて華やかな香りをプラスしました。
分厚く切って提供したこともあって皆さん喜んでくださって。
鴨も喜んでいると思います。
ありがとうございます。
最後に


最後に強調したいのは、ワインを「ナチュラルか、そうでないか」の二元論で分ける必要はないということです。
正解ではなく「グラデーション」を楽しむ。
そんな姿勢でしょうか。
実際には、認証を持っていなくても素晴らしい思想で造る生産者はたくさんいます。
大切なのは、「このワインはどんな背景で、どんな思いを込めて造られたのか」を知ろうとすること。
いかがでしたでしょうか。
読む人によっては思う所がある方もいるかもしれません。
そんな危ういテーマに切り込んだえいじさんに拍手を。(喝采)
いつもとはやや違う切り口のテーマでの開催になりましたが
終わってみればいつも通り学びあり笑いありの楽しい会となりました。
こんな感じで今年も奈良ワイン会頑張っていこうと思いますので次回以降もよろしくお願いいたします。


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