これまでコム兄の東京物語を紹介してきたわけですが
今回はスピンオフ的にコム兄のお勉強の様子を紹介したいと思います。
東京物語本編の様子はこちらからご覧ください
アフリカー、デゴルジュマンさん編
ワインステーション+さん編
2日目
2016年からミシュランの星を獲得している名店Abysse。
この度の東京物語の大きな柱になっていたのがこちらのレストランでのお食事でございました。
シェフの目黒浩太郎さんはフランスでの修行の後
三ツ星レストラン「カンテサンス」で腕を磨かれた方。
アミューズからメインまで魚介のメニューが並ぶお魚フレンチ。
どんなお料理を頂けるのでしょうか。
早速行ってみましょう。
ちぇけら。
乾杯
入店して案内されて席に着くと、まずはソムリエさんに写真を撮影してもよいかの確認。
「かまへんで(翻訳しています)」ということで厨房をパシャリ。
とてもライブ感のあるキッチンでこの動きを見ているだけでシャンパン1本余裕で空きます。
照明や使われているクロスも全体的に落ち着いた印象でオシャレ。
ソムリエさんの基地みたいなスペースもカッコいいですよね。
席に着くとこのような状態でセッティングされていたわけですが
レター的な何かが置かれております。
「あら、いきなり告白とかずいぶん積極的ね」
なんて妄想もしたりして開封してみるとドリンクメニューが書かれてあるのでした。
コム兄ははなっからペアリングをオーダーすると心に誓って訪れていますので、
ラブレターでないと理解した瞬間にさっと閉じて元に戻しましたが
オシャレですよね。
コム兄はたぷんたぷんになるほどヘパリーゼその他を決めてきたわけですが
この後のことも考えて少なめの量のハーフでお願いしたのでした。
ということで最初の一杯はこちら。
Brice Heritage Brut N.V
「あまりメジャーなシャンパーニュではありませんが素晴らしいシャンパーニュでございます」
と注いでくださいました。
特にシャンパーニュフリークなコム兄ではありませんが
こちらのシャンパーニュは口にしたことがあります。
しかも前日。
デゴルジュマンさんで3種飲み比べの際にお出しいただいたのがこちらのシャンパーニュなのでした。
記憶力がないコム兄でもさすがに覚えていました。
レモンやオレンジといった柑橘の優しい香りやブリオッシュ的な酵母感が厚みを与えてくれるわけです。
スタートに相応しいシャキッとリンゴ酸な的な爽やかさがまたたまらない。
一品目
待ちに待ったアミューズはこちら。
サイズ感的にはコム兄が上品なお口でぱくりと頂けるようなサイズ。
あん肝と毛ガニが主の食材になっています。
一番下の土台は塩味がほんのりとあって、温かいさっくりホロホロのサブレ。
毛ガニは鰹出汁で旨味を補強し酸味の効いたジュレで和えることで
旨味はあるがサッパリしている。
あん肝とのバランスがとってもいい。
サブレの温度と塩加減が極めていい仕事をしてくれている。
菊芋をスライスされたものが数枚乗せられていたが
これがまた食感のアクセントになっていてめっちゃうまい。
一口サイズの中にいろいろな要素が詰まっていて素晴らしいなと思いました。
シャンパンが止まらねぇっつうんだよ。てやんでぃ。
二皿目
熱いのでお気を付けくださいと言いながら運ばれて参りましたのがこちら。
牡蠣のフラン
出来立てフルフルのフラン(玉子豆腐みたいなやつ)の上に
コンカッセ(1㎝くらいの角切り)にしたフレッシュの牡蠣。
フレッシュの牡蠣はレモン汁で和えてあって程よい酸味で旨味が強調されていて、
お茶から抽出したというオイルが数滴たらされていて心地よい苦み?香り?が全体を引き締めます。
緑色の液体はハマグリの出汁とほうれん草のスープ。
温かいのが何とも嬉しい。
牡蠣のミネラル感、レモンの酸味、お茶の苦みが
シャンパーニュの味わいの構成要素と共鳴しあって最高にうまい。
とってもいいバランスだなと思いました。
これぞレストランのペアリングやなという感じでとても嬉しくなります。
来てよかった(まだ2品目w)
三皿目
お次の料理にと合わせていただいたのがこちらのワイン。
Skerlj Vitovska 2019
イタリアの北部、フリウリ・ヴェネツィアジューリア州でつくられるワイン。
Vitvska(ヴィトフスカ)というのは品種の名前なんだとか。
「白ワインの聖地と呼ばれるフリウリで造られたワインです。
強めにマセレーションかけてますのでオレンジワインと呼ばれるタイプです。」
と説明頂きました。
オレンジワインという事でしたがそこまで癖がなく、マスカットのような香りも残っています。
酸味がきれいで少し塩味も感じるようなそんなワイン。
そしてお料理がこちら。
「スミイカをご用意いたしました」
と提供いただきました。
全体が白い食材で統一されていてとっても洗練された印象です。
きれいですね。
仕上げにスープを注いで仕上げてくださいました。
スミイカ(甲)イカは生で食べるとモッチリとして甘いですが、
表面だけにサッと火を入れる事でサクサクッとした食感に。
上手に甘みも引き立てられています。
合わせた食材は冬の野菜であるカリフラワー、カブ、ゆり根が添えられていて
少量添えられた柚子の皮がいいアクセントになっています。
スープは昆布出しをベースに焼いたイカゲソなどから取った出汁。
塩味こそ控えめですが昆布の優しい旨味とゲソの香りと甘味で物足りなさは感じません。
サクッとしたイカ、ゆり根の甘み、カブとカリフラワーの触感。
アロマティックで塩味も感じるようなワインともいい感じ。
とっても美味しゅうございました。
四皿目
お次のお料理に合わせてお出し頂いたワインがこちら。
Vincent Pinard Sancerre Nuance
フランス・ロワール地方でソーヴィニョン・ブラン種からつくられたこちらのワイン。
ソーヴィニョン・ブランといえば
温暖地域ではトロピカルフルーツなどの香りがとてもキャッチーで
ファンの多い品種ですが
サンセールでつくられるソーヴィニョン・ブランは
冷涼な環境でつくられることから柑橘やハーブのようなスッキリシャープで
少し青っぽいイメージのものが多いのだと思います。
頂いてみますと、サッパリしている中に樽由来のスモーキーな感じが複雑さを醸し出してくれているように思います。
お料理はシロカワカジキ。
大型でとっても希少な魚種なんだそう。
白っぽい身色でしたが大型ということもあってかとても脂ののっている印象です。
藁で冷燻してあって火は入っていないけど燻製の香りを纏っています。
(スモークサーモンみたいなイメージかな)
上にのっているのはソース代わりの薬味で
カイワレ、セリ、セリの根の素揚げ、ブラックオリーブ、ドライトマト、とんぶり。
燻製香る脂ののったカジキにドライトマトの酸味がいい感じに効いています。
ワインを口に含むとセリの青さ、ほのかな燻製香とドライトマトの酸味が絡まって
最後に残るのはサンセールの果実味。
シンプルなんだけど味わいに立体感があります。
すげぇですね。
パン
この辺りでパンを出して頂きました。
バターとかではなくソースがついてきました。
面白いですね。
こちらのソースは黒ニンニクとヘンプシードオイルで作られたソースなんだそう。
黒ニンニク特有のヨーグルトのような優しい酸味がいい感じです。
コム兄的にはもう少しパンを温めて欲しかったなと思う節もなくはないですが
でもモッチリしていてソースを絡めやすくて食べやすかったです。
五皿目
続いてのペアリングワインはこちら。
Domaine de Belliviere Coteaux du loir L’effraie
ロワール地方のワインが続きます。
こちらのワインはシュナン・ブランから造られたワイン。
コトー・デュ・ロワールはロワール地方の中でも北側に位置する産地で
シノンの北側に位置するしているそう(地図で必死に探しました)
黄色い桃やアプリコットのような果実味とキレイな酸味。
良く熟しているんだけど重たくないすっきりしたワイン。
美味しいね。
なんて思いっていたら運ばれてきたお料理がこちら。
真蛸を使った一品。
柔らかくなるまで煮込んだタコをカットして断面を香ばしく焼いてあります。
その下にはモンドール入りの芋のピュレ。
添えられたオレンジ色のものは自家製の干し柿だと言います。
クソ美味い。
タコが柔らかい。
タコって下手に火を入れると固くなりがちなんですが、
そんなこと一切なくプリプリで香ばしい。
モンドールのコクがシンプルなジャガイモのピューレを格段にレベルアップさせています。
ほんでこの自家製の干し柿よ。
これがあると無いではお皿全体の印象もワインとのペアリングも全く変わってしまうようなキーマン。
ねっとり甘い柿がタコと芋のピューレの塩気との美味い具合にコントラスト(対比)していて
ワインの黄色い印象との懸け橋になっています。
ほんと美味しいなぁ。
シュナンブランの香りや余韻と柿の甘さがやばかったです。
六皿目
まだまだ続きます。
次にお出し頂いたのはこちらのワイン。
Domaine de Bonserine Cote-Rotie La Sarrasine 2015
魚料理だけのコースの中盤でまさかの赤ワイン。
しかもコートロティ。
フランスローヌ地方の北部に位置するアペラシオン。
シラー主体で造られているということで力強いものをイメージされがちですが
ミストラルという北風が吹くこの地域はむしろ寒いくらいなのだそうで
しばしブルゴーニュのピノ・ノワールと間違われるほどエレガントなワインに仕上がるのだそうです。
ソムリエの方も「この辺りなら合わせられるかなと思いチョイスいたしました」
という旨の説明をしてくださいました。
味わってみるとなるほどスパイシーなニュアンスはあるものの、エレガントでタンニンもシルキーでこなれています。
うめえなこれ。
こんな感じのコム兄好きなんですよね。
そんな赤ワインに合わせるのはこちらのお料理。
鰆のグリル。
全体はふっくらとしていて、高温でグリルした時の香ばしさが程よいスモーキーさとなって全体を纏っています。
この厚みで「今ちょうど火が入りました!!」というようなしっとり感は本当にすごい。
上にはヤマゴボウ、えごま、コリアンダーシードが添えられ、
ソースは鶏出汁ベースの赤ワインソース。
重すぎることなく、軽すぎないバランス感覚はさすがの一言。
鰆って焼くと独特の鉄っぽさを感じるわけですが(コム兄の主観です)
その鉄っぽさを活かして赤ワインと合わせているのがさすがだなと思いました。
でもそれだけではまだ少し距離があるから
ソースやあしらいで距離を埋めていって上手くまとめたって感じ。(偉そうに言うな)
簡単そうに言うてますがとんでもないバランス感覚ですよ。
牛蒡の土っぽさ、コリアンダーシードのスパイシーさ。
食べているのがお魚だっていうことを忘れてしまいそうなぐらいの満足感。
abysseさんの真骨頂といった感じでしょうか。
いやぁ参りました。
七皿目
続いてのワインはこちら。
Ried Ulm Nussberg Wiener Gemischter Satz Wieninger
オーストリアのウィーンで作られたワイン。
ヴィーナー・ゲミシュター・サッツというのはヴァイサーブルグンダー、ノイブルガーなどの品種を混色混醸したワインの事。
2013年に認定されたばかりの新しいDAC(原産地呼称制度)。
もちろんコム兄初めてなわけです。
香りを取るとなんというかフローラルというかアロマティックというか。
でもトーンは抑えめでなんだか静かな印象。
なんというかって感じ。
柑橘っぽい高い酸とほのかに苦みを感じたと思います。
大人しそうに見えて実は14.5%というアルコール度数。
面白いワインでした。
お料理はこちら。
鱈の白子のポワレ。
付け合せにはポワロー(西洋ネギ)と根セロリと一緒にゆっくりと柔らかく炊いた白いんげん豆。
熱々とろとろの白子がシンプルにうまい。
濃厚な味わいをワインの柑橘の香りでリフレッシュさせてくれたかと思いきや、
白いんげん豆と一緒にワインを合わせた時の衝撃。
さっきまで大人しくしていたワインが急に存在感が出てきます。
14.5%はだてではありませんでした。
野菜の味のエッジを際立たせつつ、自分の存在も前に出してくる。
オーストリアのワイン(とりわけグリューナー)は野菜との相性が抜群なわけですが
今回のゲミシュターサッツも例外ではないようでした。
めちゃくちゃ美味しかった。
静から動に化ける瞬間がめっちゃ面白い組み合わせでございました。
八皿目
メインディッシュに合わせましたのがこちらのワイン。
Gevrey Chambertin 1er Cru Les Cazetiers
残念ながら写真を撮り忘れてしまったので生産者は失念してしいましたが
「最後くらいはこういうワインを合わせたいと思いまして」
とサーブしていただきました。
お料理はこちら
金目鯛のポワレ。
皮目をパリッと香ばしく焼き付けることで
赤ワインにも合わせられるように工夫が施されています。
オータムポエムと呼ばれるアスパラ菜のソテーと芽ネギが添えられています。
仕上げにかけていただいたスープは金目鯛のアラから取った出汁に
タイムやセージなどの香りをつけたもの。
このスープのコラーゲンを内包したテクスチャとワインのテクスチャーがぴったり合うわけです。
これまではぴったりと料理とワインが絡まりあうペアリングでしたが
今回はワインを引き立てているような印象でした。
皮目はこれでもかというほどにパリッとしているのに
身の方にはストレスがかかっておらず、驚くほどふっくらしっとり。
どうやったんですかこれ。
めちゃくちゃ美味しい。
素晴らしいお料理と素晴らしいワインを提供いただいたわけですが
コム兄の肝臓のキャパが限界を迎えたようであまり楽しめなかったのが本当に残念でなりません。
九皿目(アヴァンデセール)
デザート一発目はこちら。
左側から安納芋のクリーム、胡桃のクリーム、焼きリンゴのクリーム。
手前にはチョコレートクッキーのクランブル。
仕上げに芋焼酎のサヴァイヨンをかけてくださいました。
それそれのクリームがとっても滑らかで素材の甘さが上品で・・・。
全く引っ掛からずにすぅーッと溶けてなくなっていきます。
そこに焼酎のサヴァイヨンをつけて食べるといきなりボリュームが出て大人のスイーツに大変身。
シンプルなんだけどデザートと同時に食後酒まで頂いたようなそんな一皿でした。
十皿目(デセール)
最後は洋ナシのババロア
横から見るとこんな感じ。
一番下は水晶文旦のパンケーキが土台になっていてその上にババロア。
その上にはバニラの薄いシート、さらにその上には洋ナシをくりぬいたもの。
くりぬいた洋ナシの上には文旦のジュレが乗っていて酸味を補っています。
文旦、洋ナシ、バニラという少ない要素ですが、
いろんな味わいがしてとっても美味しかったです。
食後のお飲み物
最後にはハーブティーを頂きました。
レモンバームのすっきりとした香りが心地よく、
食事の余韻を壊すことなく上品にまとめてくださいました。
お腹いっぱいぱいのコム兄でしたがプティフールまでしっかりと頂き
大満足でございました。
ごちそうさまでした。
最後に
いかがでしたでしょうか。
少しでも美味しさが伝わていると幸いです。
半分二日酔い状態のコンディションでしたが(しっかりしろ)
とっても美味しく頂くことが出来ました。
お肉の料理が無いので(それだけではないと思いますが)お腹がいっぱいになっても全然重たくありません。
お料理がおいしいのは言うまでもありませんが、ペアリングに関してもとっても勉強になりました。
この経験を生かすも殺すもコム兄次第だと思いますので、ますます精進してまいりたいと思います。
ではまた!!
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