第二章 エピソード2

Circle|店づくりの記録

前回の記事では、

店舗に残された大量の不用品を前に、

70万円という撤去見積もりを見て、

自分たちで片付ける決断をした話を書きました。

今回はその続きです。

正直なところ、今回の話はあまり華やかなものではありません。

料理でもワインでも内装でもない。

飲食店を営業するうえで避けて通れない、「衛生管理」の話です。


青森にいる時に届いた一本の連絡

私が青森へ帰省していたある日、妻から一本の連絡が入りました。

店舗の裏の庭の所で大きなネズミの死骸が見つかったというのです。

私は実物を見ていませんが、

話を聞く限り、それはそれは大きかったようで、

おそらくドブネズミだったのではないかと思います。

(デカいのがドブネズミというのも今回初めて知った。)

『レミーのおいしいレストラン』を観た時は、

「料理ができるネズミ、すごいなぁ」

くらいに思っていました。

でも実際に店を持つ側になると感想は変わります。

レミーなら歓迎ですが、現実のネズミはご遠慮願いたいところです。

もちろん気持ちの良い話ではありません。

しかも、私が不在だったため

たまたま片付けを手伝ってくれていた義父が処理をしてくれたとの事でした。

本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。

ただ、この出来事をきっかけに店舗全体を改めて見直すことになりました。

実は妻が以前から「バルサンを炊きたい!」とずっと言っていた訳はこんなところに隠れていたのでした。


倉庫に隠れていた問題

店舗の奥にある倉庫には、

前のオーナーさんが作ったと思われる木製の棚が設置されていました。

収納力もあり、一見すると便利そうな棚です。

ところが、よく確認してみると棚には大量のホコリが積もっていました。

さらに上段の見えにくい場所には、ネズミやコウモリのものと思われる痕跡も見つかりました。

長期間使用されていなかった建物では珍しいことではないのかもしれません。

ですが、飲食店として営業する以上、そのまま使い続けるという選択肢はありませんでした。

掃除のしやすさや日々の管理まで考えると、むしろ今のうちに見直しておくべきだと判断しました。

そこで思い切って棚を解体することにしました。


壊して、洗って、処分して

まずは不用品を処分し、棚を壊し、床をデッキブラシでひたすら磨く。

地味で骨の折れる作業です。

イヤホンでspotifyを流しながらひとり黙々と作業を続けていました。

すると右のイヤホンが汗で滑ったのか

絶妙なタイミングで(悪く)洗剤入りのバケツへぽちゃん。

そのままお亡くなりになりました。

なかなか見事な着地でした。(言うてる場合か)

正直なところ、料理人を目指した時に

「将来自分の店の倉庫を丸洗いすることになる」

とは想像していませんでした。

それでも不思議と嫌な気持ちはありませんでした。

少しずつ空間がきれいになっていく。

長年積み重なっていたものが取り除かれていく。

その変化が目に見えて分かるからです。

そして何より、汗を流した後のハイボールの美味い事。

あれはなかなか他では味わえません。

作業が終わる頃には、倉庫は見違えるほどスッキリしていました。

床も想像以上にきれいになり、衛生的に管理できる状態になりました。

振り返ってみると、本当にやって良かったと思っています。


専門業者による害獣対策

今回の件を受けて、専門業者さんにも相談しました。

現地を確認していただき、建物の状況や侵入の可能性がある箇所を点検してもらいました。

そのうえで忌避剤の散布と今後の対策についてアドバイスを受けました。

正直なところ、私は「一度対策をしたら終わり」だと思っていました。

ですが実際にはそうではありませんでした。

害獣対策も衛生管理の一部であり、継続して確認し続けることが重要なのだそうです。

今回の作業によって大きな安心感を得ることができましたが、同時にスタートラインに立っただけでもあるのだと思います。

今だから良かった

今回の件で強く感じたのは、

「今で良かった」ということです。

もしこれがお店をオープンした後だったらどうでしょう。

衛生面に関わる問題は、小さなことでも見過ごすわけにはいきません。

今回は営業前だったからこそ、

時間をかけて清掃し、専門業者にも相談し、必要な対策を講じることができました。

倉庫を丸ごとデッキブラシで洗うという作業も、営業が始まってからではなかなかできなかったと思います。

もちろん問題そのものには感謝することはできません。

ですが見方を変えれば、営業が始まる前に問題を教えてくれたとも言えます。

不幸中の幸いとは、まさにこういうことなのかもしれません。


衛生管理は終わりがない

今回改めて感じたのは、衛生管理に終わりはないということです。

どれだけ掃除をしても、

どれだけ設備を整えても、

継続して管理しなければ意味がありません。

料理やワインのことばかりに目が向きがちですが、

お客様に安心して食事を楽しんでいただくためには、

こうした見えない部分の積み重ねこそが大切なのだと思います。


想定外は必ず起きる

開業準備を進めていると、本当に次から次へと予想していなかった問題が発生します。

不用品撤去。

設備の修繕。

衛生管理。

どれも当初の計画にはありませんでした。

それでも現実に起きた以上、受け入れて対処するしかありません。

むしろ大切なのは、

「問題が起きないこと」

ではなく、

「問題が起きた時にどう向き合うか」

なのだと思います。


楽しくない作業こそ大切

店づくりというと、

料理を考えたり、ワインを選んだり、

内装を考えたりする華やかな部分に目が行きがちです。

でも実際には、

その裏側にある地味な作業の積み重ねでお店は成り立っています。

掃除。片付け。修繕。整理整頓。

どれも決して目立つ仕事ではありません。

正直、楽しい作業ばかりではありません。

それでも、そうした作業を前向きに取り組めるかどうか。

少しでも楽しみながら進められるかどうか。

それが結果的に良い店づくりにつながるのだと思ったりします。

ワインや料理はお客様の目に見えます。

でも衛生管理は目に見えません。

だからこそ手を抜かない。

Circleはそんな店でありたいと思っています。

開業準備もいよいよ大詰めです。

これからも想定外の出来事はたくさん起きるでしょう。

それでも焦らず、無理をせず、一つずつ。

ぼちぼち前に進んでいこうと思います。

衛生面も含めて、お客様に安心して過ごしていただける店を作りたい。

そんな中、地味な作業ばかりが続いていますが、一歩ずつオープンへ近づいている実感もあります。

クラウドファンディングも6月16日現在で40名の方々から111万円のご支援を頂いております。

その他にも実際にあった際に「直接渡したい」と言ってお祝いを包んでくださった方もいらっしゃいます。

本当にありがたい限りでございます。

オープンまでいよいよ一ヶ月をきりました。

ワールドカップ観戦で寝不足気味ではありますが

怪我や病気には気をつけてボチボチ頑張っていこうと思います。

と言うことで今回はここまで。

第二章 エピソード3に続く。

コメント

タイトルとURLをコピーしました