こんにちはコム兄です。
今回の記事では2023年4月中旬に行われました西ギリシャワインに関する講習の様子を紹介させていただきたいと思います。
今回のセミナーはギリシャ人マスター・オブ・ワインの
コンスタンティノス・ラザラキスMV
が来日して西ギリシャワインマスタークラスを開催し講師を務めてくださいました。
ちなみにちなみに「マスター・オブ・ワイン(MW)って何?」ってChatGPTに聞いてみますと、
「マスター・オブ・ワイン」は、ワインに関する資格・称号で最高峰と言われています。
この称号を持つ人たちは、単に難しい試験を突破したすごい人たちではなく、評論家として活躍していることが多いことから、彼らの評価は、ワインを選ぶ際の参考になります。
ChatGPTさんより引用
といった答えが返ってまいります。
今回はそんなワインのプロ of プロをお迎えして
ギリシャの中でもペロポネソス半島にある2つの産地
”アハイア”と”イリア”にフォーカスして
地域の個性や歴史、西ギリシャの多様なワインカテゴリーや
この地が秘めるポテンシャルについて解説していただきました。
テイスティングは全種類ブラインドテイスティングという珍しいスタイルでしたが
先入観を取っ払ったことで、コム兄自身新しい発見があったり学びの多い機会となりました。
という事で
せっかくなのでコム兄のアウトプットがてら
皆様に紹介させていただければと思います。
とはいっても読者の皆さんはコム兄の事は一旦忘れて(後で思い出してね)
コンスタンティノス・ラザラキスMVさんが語りかけてくれているイメージで読み進めることをお勧めします。
その方がほら、あれですよ。
なんか説得力あるでしょ。(誰が説得力ないねんwww)
概要、アペラシオン、ブドウ品種を紹介する前編、
テイスティングの様子を紹介する後編の2回に分けてお届けしていきたいと思います。
ペロポネソス半島と言えば
試験勉強の時に
ネメア
アギオルギティコ
ヘラクレスの血
という3つのワードだけを必死に詰め込んだことを思い出しました。(当然抜け落ちておりましたが・・・)
この記事を読んでいただく事で西ギリシャについての解像度がグッと上がりますので
是非最後まで読んでみて下さいね。
では早速行ってみましょう!!!
ちぇけら。
ギリシャってどんなところ?
まずギリシャの地図をご覧いただきたいのですが、
ギリシャはヨーロッパの南東部に位置しバルカン半島の最南部に位置する国です。
ギリシャは海に囲まれた国であり、島だけでなくどこにいても海を見ることができます。
つまり、ギリシャのどこにいても何かしらの形で海からの影響を受けることになります。
”アハイア”と”イリア”
特に今日は西ギリシャに焦点を当てますが、その中でも重要な地域が2つあります。
一つ目はアハイアで、地図で赤色で示している場所がその地域になります。
二つ目は、アハイアの少し西側に位置するイリアで、地図で示している地域です。
これらの地域は海に近いこととギリシャの西側に位置していることから
雨が多く湿度も比較的高い場所が多いです。
西から吹く偏西風は海からの湿度を含むため、一般的に西側は雨が多い傾向があります。
また、ギリシャは山が多いことでも知られており
その結果今回フォーカスする2つの産地は
山のテロワールと海のテロワールが組み合わさった状態にあります。
アハイアが山のテロワールであり、イリアの方が比較的標高が低いエリアになります。
古代ギリシャから続く産地
ギリシャは歴史を感じることのできる国であり、
ワインの歴史も非常に古い国です。
紀元前まで遡ると5000年以上前からワインが造られていたと言われています。
また、オリンピック発祥の地であるオリンピアはイリアに位置しており、
実際、東京オリンピックのトーチの火が採火されたのもこの地域です。
世界で最も古いワイン文化が継承されている場所の一つと言えることが出来ますし、
ブドウが数々の神話に登場することからも
古代ギリシャにおいていかに重要であったかを今に伝えています。
希少な西ギリシャのワイン
本日のテイスティングアイテムが非常に希少であることについてもお伝えしたいと思います。
西ギリシャのワインだけを扱ったイベントは世界的に見ても珍しいものです。
ギリシャ全体のワイン生産量を見てみましてもボルドー地方の半分ほどの生産量しかありません。
さらに、ギリシャ全体の生産量のうち輸出されているのは10%以下程度しかありませんので
それを踏まえて考えますと
今日大阪でテイスティングされる西ギリシャワインのイベントがいかにクレイジーであるかがお分かりいただけると思います。
一般的に有名なワインであるシャトー・マルゴーやシャトー・ラフィットの生産量は約50万本程度ありますが、
高価であるものの生産量が多いので世界の市場では比較的容易に入手できます。
私自身マルゴーのことが大好きなので別にマルゴーの悪口が言いたいわけではありませんが
それは希少なワインではない、レアなワインではないということを言いたいのです。
(ちなみにコム兄は飲んだことがありません・・・)
例えばオーストラリアで有名なヒルオブグレースというワインは、生産量が約4000本程度しかありません。
同じくらい名声が高いワインであっても、
その希少度という文脈で語ると全く違った話になります。
したがって今話したシャトーマルゴーやヒルオブグレースと比較すると
西ギリシャのワインは後者に近いレアなワインと言えるでしょう。
西ギリシャのPDO(原産地呼称保護)とPGI(地理的表示保護)
先ほどの地形の話に続いて、この写真を見ると急な斜面に畑があることが分かります。
また、先程アハイアの方が標高が高いとお話しましたが、
この険しい山からわずかに移動するだけで、
イリアのような低い標高で海に隣接した畑に辿り着くことができます。
近い距離で異なるテロワールを有する”アハイア”と”イリア”についてアペラシオンも絡めながらもう少し詳しく見ていきたいと思います。
その前にヨーロッパの規則についてお話ししたいのですが、
PDO(原産地保護呼称)とPGI(地理的表示保護)という格付けがあり、
一般的にはPDOが最高のカテゴリーと認識されています。
PDOは品種や樽の使用、熟成期間などが厳しく決められています。
一方でPGIは規制がやや緩いため使用する品種やスタイルなどに高い自由度があります。
実際にはPGIのワインでもPDOのワインよりも高いクオリティのものが存在することもあります。
アハイアには4つのPDOと2つのPGIが存在しています。
広域をカバーするPGIがあり、この地域ではPGIアハイアが該当します。
また、スロープ・オブ・エギアリアのようにより限定されたエリアをカバーするPGIも存在しています。
イリア地域にはPDO指定が存在していませんが2つのPGIがあります。
広域をカバーするPGIがPGIイリアであり、より小さな限定されたエリアがPGIレトリニです。
こちらの地図の左側はPDOの地図ですが
重複する部分が多く理解しにくいものとなっています。
右側の地図はPGIの地図であり
先ほど言ったようにエリア全体のPGIとその中に含まれる小さなエリアのPGIが示されています。
アハイアのアペラシオン
次に、アハイアについて少し詳しく見てみましょう。
PDOパトラ
アハイアには4つのPDOが存在することをお話ししましたが、
その中で最も重要なのがPDOパトラです。
PDOパトラはギリシャの中でも最大のPDOの1つであると共に非常に多様性に富んだ産地です。
PDOパトラの定義としてはロディティスという品種を使った白ワインでなければなりません。
法律上はオフドライや中辛、中甘口のスタイルも許されていますが
市場に出回っているものはほぼ辛口ワインです。
また土壌や標高、斜面の向きなどが異なるため
非常に多様性に富んでおり
結果として生まれるワインのスタイルも多岐にわたります。
ロディティスという品種のみが認められていますが実際には多くのクローンやサブ品種も存在しており
ロディティス自体も非常に多様な品種です。これにより話はますます複雑になってしまいますね。
PGIスロープ・オブ・エギアリア
アハイアの辛口ワインのアペラシオンについて話しを移しましょう。
特に注目したいのは、PGIスロープ・オブ・エギアリアです。
こちらのテロワールは、ギリシャだけでなく世界的にも非常にユニークで驚くべき特性を持っています。
この場所を紹介する際によく言われるのは、「海に面したバルコニー」ということです。
ここの畑から撮られる海の写真を見ると
ヘリコプターにでも乗って撮ったの?
と言われるほど、バルコニーのように海に飛び出しているのです。
アハイアには2つのPGIがありますが、それらには大きな違いがあります。
もちろん、スロープ・オブ・エギアリアという小さなエリアで造られるワインは均一性が見られます(ワインのスタイルに関して)。
また、許可されている品種も様々であり、様々なスタイルのワインを造ることができます。
ちなみに、スロープ・オブ・エギアリアの地域でロディティスを栽培してワインを作った場合
PDOパトラとPGIスロープ・オブ・エギアリアの両方の規定を満たしているため
どちらを名乗っても問題ありません。
一般的にはトップカテゴリーであるPDOを名乗るように思いますが、
実際には多くの生産者がPGIスロープ・オブ・エギアリアを選ぶことがあります。
なぜなら、先ほども言った通りPDOパトラは広いエリアですので
より狭いエリアに特定したイメージのPGIを選ぶという事が起きるわけです。
アハイアの気候条件
続いて気温と降雨量の違いについてご紹介します。
まずは西アハイアの平均気温と雨量についてです。
特に8月の気温と降雨量に注目していただきたいのですが、
8月は雨がほとんど降らず、最高気温は40度近くになることもありますし、最低気温は17℃くらいになることが分かります。
一方、エギアリアでは最高気温が32℃を越えることがほとんどなく、
夜の気温は10℃くらいまで下がります。
このような気温差はブドウの成熟にとって非常に重要な要素となります。
ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが
ヒロイック・ヴィティカルチャーという認証があります。
この認証を得るためには、
畑の標高が高く斜面が急であることが求められます。
スロープ・オブ・エギアリアは100%ヒロイック・ヴィティカルチャーに当てはまっていることから、標高が高くて急斜面であることが分かります。
こちらの図をご覧いただくとスロープ・オブ・エギアリアのテロワールを理解しやすいと思います。
左側が昼間の図で昼は海からの冷却効果が得られることが分かります。
一方で夜になると山の標高の高い部分は気温が低くなり
冷たい風が降りてくることで冷却効果が得られることが分かります。
このように常に空気の循環が得られる畑は世界的に見ても珍しいです。
また、こちらのスロープ・オブ・エギアリアの写真も美しいので、ぜひご覧いただきたいです。
PDOマスカット・オブ・パトラとPDOマスカット・オブ・リオ・パトラ
次に、アハイアの甘口ワインに関するPDOを紹介します。
こちらには、マスカットという品種にフォーカスした2つのPDOがあります。
ひとつはマスカット・オブ・パトラ、
もうひとつはマスカット・オブ・リオ・パトラです。
これらのPDOではどちらも100%マスカットを使用した甘口ワインを生産する必要があります。
甘口ワインの作り方としては、
ブドウを天日干しするタイプと酒精強化するタイプの両方が許可されています。
これら2つのPDOの違いはマスカット・オブ・パトラが非常に広い地域をカバーしているのに対して、
マスカット・オブ・リオ・パトラは小さな町の限定的な地域で生産されていることです。
こちらに示しているのは、マスカット・オブ・リオ・パトラで有名な生産者の畑の美しい風景です。
PDOマヴロダフニ・オブ・パトラ
最後に紹介するPDOはマヴロダフニ・オブ・パトラです。
このPDOの名前の付け方は、イタリアでよく見られる形式で、品種名と産地の組み合わせです。
つまり、マヴロダフニが品種名であり、パトラが地域の名前です。
このPDOは甘口ワインであり酒精強化の方法のみが認められています。
3つにサブ地域があり、
リオ市周辺地域
西アハイアの南寄りの地域
標高が高く石灰質土壌中心の地域
があげられます。
法律上の規定では樽での熟成は12か月以上が必要ですが
多くの生産者はそれ以上の期間を熟成させています。
興味深いことに最大49%までブラック・オブ・コリントという品種をブレンドすることが許されています。
またこの樽熟成に関しては、非常に大きなサイズのオーク樽を使用するのがポイントです。
一部のワイナリーでは100年以上前から使用されている大きな樽を使用し
中身も同じくらいの古いワインが含まれていることもあります。
イリアのアペラシオン
次にイリアのPGIについてご紹介しましょう。
イリアにはPDOは存在しませんが、2つのPGIがあります。
大きなものがPGIイリアで、小さな場所をカバーするのがPGIレトリニです。
イリアの方は非常に大きなPGIであり、使える品種も多様でテロワールも多様です。
そのため造られるワインのスタイルも非常に多様化しています。
PGIレトリニでは赤ワインの生産のみが許されています。
レトリニで素晴らしい白ワインを造っている生産者もいらっしゃいますが
その場合PGIはレトリニではなくPGIイリアとなります。
レトリニで最も重要な品種がレフォスコです。
ここで興味深い話をしましょう。
ある品種が一世紀以上にわたりその地で栽培され続けた場合
その品種はその地の固有の品種として認識される傾向があります。
例えばリベラ・デル・デュエロでは
ベガ・シシリアが1866年にカベルネ・ソーヴィニョンを植えていることが知られています。
リベラ・デル・デュエロのDOCが設立された当時、
カベルネ・ソーヴィニョンが栽培され始めてから既に1世紀以上が経過していたため認可品種に加えられました。
同じような時期にレトリニではレフォスコが栽培され始めました。
つまり一世紀以上にわたりレフォスコが栽培されていることから
この品種が土地の特性を吸収し他の産地で栽培されているレフォスコとは異なる特徴を示しているため
レトリニの地元の品種として認識されるのです。
希少で個性豊かなブドウたち
今回は、個性豊かなブドウの品種についてご紹介します。
これらの品種はそれぞれ希少であり
品種を理解することはギリシャのワインを理解する上でとても重要です。
果皮がピンク色のブドウと白ブドウ
ロディティス
まずはロディティスから始めましょう。
ロディティスは果皮がピンク色をした品種であり
ロゼワインや白ワインを造ることができます。
しかしロゼを作った場合PDOパトラでは白ワインしか認められていないためPDOとして名乗ることはできません。
先ほどお話しした通りロディティスには多様性がありますが、
ロディティスという名前自体にピンク色という意味があることからもわかる通り共通してピンク色をしています。
しかし、サブ品種やクローンには多くの違いがあります。
例えばグリーンロディティスというサブ品種は比較的収量が高く
クリーンでシンプルなスタイルのワインが多いです。
一方ロディティス・アレプーというサブ品種はキツネと呼ばれる品種であり
トップクラスの品質のワインを造ると言われています。
ロディティスから造られるワインのスタイルは多岐に渡ります。
クラシックでフルーティーなものから、
標高の高い地域で造られるスタイル、
スキンコンタクトをしてオレンジワインのように造られたワインまで、
様々なスタイルがあります。
そのためどなたでも何れかのスタイルで楽しむことができる素晴らしい品種と言えます。
ホワイトマスカット
マスカットについてのお話に進めますと、
ギリシャでは様々な種類のマスカットが栽培されています。
中でも最高品質とされるのがマスカットブラン・ア・プティ・グランという品種です。
アハイア地方のマスカットは特に有名ですが
特筆すべきはマスカットから辛口のワインを造る優れた生産者が多数存在することです。
ただし、辛口のワインはPDOとして認められておらずPGIを名乗ることしか許されていません。
甘口ワインについては先程紹介した2つの作り方があります。
一つは天日干ししたブドウを使用する方法であり
もう一つは酒精強化して甘みを残す方法です。
酒精強化のスタイルには、未発酵の果汁にスピリッツを加えて酒精強化する「ヴァン・ド・リキュール」のようなものも存在します。
さらに、もう一つの作り方としては、果汁が発酵している途中に酒精強化をして発酵を強制的に停止させる「ヴァン・ドゥー・ナチュレル」のようなスタイルがあります。
マラグジア
また、PDOに含まれないけれども興味深い品種についても紹介していきたいと思います。
まずはマラグジアという品種からいきましょう。
ギリシャの中では比較的新しい品種と言われていますが
実は1000年以上前からギリシャの畑に存在していました。
しかし、商業的にワインとして販売されるようになったのは1993年以降のことです。
現在ではこの品種が最も人気のある品種の一つとなっています。
ギリシャのワインは常に新しい発見があり、
多くの生産者が新たな品種を発見し(どちらかというと再発見に近いニュアンス)、
絶滅の危機に瀕した品種を救ってきています。
そのため今後10年後に同じセミナーを行った場合でも今とは全く異なる品種が紹介されるかもしれません。
ギリシャのワインは常に進化し続けているのです。
黒ブドウ
マヴロダフニ
マヴロダフニという黒ブドウ品種は赤ワインにおいて非常に重要な存在です。
このマヴロダフニという品種は辛口のワインを作ることもできます。
ただしマヴロダフニ100%で造っても
他の品種とブレンドして造ったとしても
PDOという名称を使用することはできません。
なぜなら、PDOは甘口のワインに限定されているからです。
さらにヨーロッパの法律では辛口のマヴロダフニを作った場合、
ラベルにマヴロダフニという名前を書くことができないのです。
もちろんこのPDOは甘口のマヴロダフニを保護するためのものなので
仕方のないことではありますがちょっと変わったルールですよね。
とはいえマヴロダフニの辛口スタイルはここ数十年で最もエキサイティングなワインのスタイルの一つだと言われています。
アウグスティアス
次にご紹介するのがアウグスティアスという品種です。
これはイリアの一部の島でしか栽培されていない非常に珍しいブドウ品種です。
実際の栽培面積はわずか20ha程度しかありませんので、希少性が高いです。
レフォスコ
そして、レフォスコという品種です。
先ほども少し触れましたが、レトリニという地域において歴史的に重要なブドウ品種です。
今回のまとめ
いかがでしたでしょうか。
完全にマスタークラスですよね。(は?)
今回は西ギリシャの産地、特にアハイアとイリアを形成するテロワールや主要品種にについて紹介しました。
と言ってもコンスタンティノス・ラザラキスMWがおっしゃったことと
参加者に配られたPDFをもとに書いただけなので
コム兄的な要素は皆無だったわけですけど、情報量がとっても濃厚で凝縮していますよね。
地図だけじゃわかんないし、もちろんテキストだけでもピンとこない。
こうやって一つ一つ解像度を上げて理解を深めていきたいと思います。
次回はテイスティングの様子を紹介してまいりますので楽しみにお待ちくださいね。
ぼちぼち更新してまいりますので、くれぐれもゆるーくお待ちくださいね。
きっと皆さんもギリシャワインが飲みたくなるはず!!!
今年の夏はギリシャワインで決まりですね。
ではまた!!!
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