Circle エピソード7

Circle|店づくりの記録

前回のエピソード6では、奈良での開業を本気で決断するまでの葛藤を書いた。

助走は十分にしたはずなのに、最後の一手がなかなか決まらない。

元カレー屋を仮押さえしながらも、まだどこかで揺れている自分がいた。

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そして迎えた3月1日。

もう一つの選択肢である「元喫茶店」の内見に向かった。


元喫茶店の屋上で見えた景色

3月1日。

元喫茶店の内見に向かった。

案内してくださったのはビルの所有者の方。

そして第三者的な立場で商工会の方も同席してくださり、まずは三人で話をした。

その後、実際の内見は所有者の方と二人で回った。

厨房エリア

厨房の区画に通されて、まず思ったのは「歴史がある」ということだった。

古い。けれど、嫌な古さではない。

使い込まれていながらも現役で活躍しているそれらからは

貫禄さえ思わせるオーラを感じた。

厨房は想像よりも取り回しが良さそうだった。

広すぎず、狭すぎず。

10席前後の店を構想している自分にはちょうどいいサイズ感だと感じた。

そして驚いたのが、店の裏手にある大きなパントリー。

かなり広い。

冷凍ストッカーもいくつか置かれていて、保管力は申し分ない。

ワインを扱う店にとって、この空間は大きな武器になるかもしれない。

冷静に考えても、ここは明確なアドバンテージだと思った。


居住エリア

続いて住居部分を見せてもらった。

現在は所有者家族のお二人が暮らしているとのこと。

しきりに「古いから」「汚くてすみません」とおっしゃっていたけれど、正直なところ、僕には全く問題のない範囲に見えた。

築年数はそれなりに経っている。

当然ダメージもあるだろう。

でも、暮らせない感じはしない。

二階には複数の部屋があり、収納も多い。

子どもたちそれぞれに部屋を用意できるかもしれない、という現実的な想像ができた。

三階はコンクリートがむき出しの空間で、今は物置のように使われている。

用途はまだ分からないが、余白があるというのは悪くない。

そして屋上。

見晴らしがよかった。

風が抜ける。

ここで深呼吸をしたとき、

ふと「ここで暮らすかもしれない自分」を想像した。

不思議と、違和感はなかった。

条件面

一通り内見が終わると条件面の説明も受けた。

この元喫茶店は、土地と建物の所有者が別という少し特殊な形をしている。

商店街の中で、隣の建物と密接している立地。

契約上の条項の中には、将来的に更地で返却するという文言もあるという話だった。

ただ、現実的にそれが簡単ではないことも、皆が理解している。

制度と現実のあいだにある、少し歪な部分。

頭では理解しながらも、その重みは感じた。

とはいえ、提示された条件は、正直に言って驚くほど良いものだった。

店舗と住居が一体であることを考えれば、経営の難易度は一段下がる可能性がある。

もちろん、多少の改装は必要だろう。

水回りは整えたい。

家族の動線と来客の動線が重なっている点も、設計で解決しなければならない。

それでも、クリーニングと最低限の改修で始められる可能性を感じた。

”待つ”しかできないモヤモヤ

一方で、元カレー屋もまだ仮押さえしている。

こちらは純粋なテナント物件。

家賃は決して安くない。

その存在があるからこそ、今回の元喫茶店の条件がより鮮明に見える。

帰宅して家族に伝えた。

反応は思いのほか前向きだった。

正直に言うと、もし可能ならすぐにでも契約したいと思っている。

でも、まだ交渉中の人がいるという事実も変わらない。

条件が良いだけに、待つしかないこの時間がもどかしい。

喜びきれない。

けれど、確実に心は動いている。

助走の最終地点に立っているような感覚。

踏み切るか。もう一歩助走を続けるか。

元喫茶店の屋上で見た景色が、頭から離れない。

Circleは、どこで始まるのだろうか。

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