今回の奈良ワイン会のテーマはプロヴァンス。
この記事では会の様子をもとに
「プロヴァンス地方のワイン特徴」「カシス白ワイン」「バンドールの赤・ロゼ」の違いと魅力を専門的かつわかりやすく解説します。
でも焦点は「ロゼ」ではありません。
世にも珍しい夏ではなく冬に開催する南仏がテーマのワイン会。
どんな会になったんでしょうか。
最後までお読みいだければきっとその理由も納得していただけるはずです。
早速行ってみましょう。
プロヴァンス地方とは?南フランスワインの基本

まずは全体像から。

「南フランス」と一言で言っても、実はかなり広いエリアを指します。
地中海沿いを西から東へたどると、
- スペイン国境に接する Roussillon
- その東に広がる巨大産地 Languedoc
- さらに東、地中海のリゾート地帯 Provence
- そして北側には Rhône Valley の南部
という位置関係になります。
スペインに近い西側は乾燥した大地と山岳地帯。
東へ行くほど海沿いのリゾート色が強まり、
プロヴァンスは世界中のセレブが訪れるコート・ダジュールを含むエリアです。
同じ“南”でも、空気感は少しずつ違います。
南フランスのワインの大きな特徴

共通するのは、地中海性気候。
・日照量が多い
・乾燥している
・風(ミストラル)が強い
そのためブドウはよく熟し、
アルコールはやや高めになりやすい。
海が近いけど乾燥しているというのが地中海性気候の特徴みたいですね。
夏場には亜熱帯高気圧に覆われることで雲ができにくいんだそう。
さらにこの地域は気圧差から生じる風(ミストラル)が吹くことで湿気を飛ばしてくれるので健全なブドウが育ちやすいと言います。
暑いだろうから収穫とか畑仕事はきつそうですよね。
では、この地域ではどんなブドウが植えられているのでしょうか。

主流品種は
- グルナッシュ
- シラー
- ムールヴェードル
- カリニャン
といった黒ブドウ。
白では
- グルナッシュ・ブラン
- マルサンヌ
- ルーサンヌ
などがよく使われます。
基本的にはブレンド文化。
単一品種というより、土地に合わせたアッサンブラージュで個性を出します。
なかなか熟さないでおなじみのムールヴェードルですが
このエリアの気候条件だからこそ本領を発揮できるのかもしれませんね。
プロヴァンス=ロゼのイメージ

その中でも特に有名なのがプロヴァンス。

「プロヴァンス」はラテン語「Provincia(属州)」に由来し、地中海文化とワイン醸造の歴史が深い地域です。
このエリアはガリアにおけるローマ支配の初期拠点であり、
地中海交易圏として早くから発展し、現在のリゾート的な側面だけでなく
古い歴史を持つワイン産地でもあります。
少し難しい話になってしまいましたね。
大丈夫。コム兄もよくわかってないから(おい!)
いい感じに飛ばしながら読んでくださいね。
現在、プロヴァンス全体の生産量の約9割がロゼ。
淡いサーモンピンクの色合い、
洗練されたボトルデザイン、
地中海のテラスで飲まれるイメージ。
世界市場におけるロゼの象徴的存在になっています。
ただし、それはあくまで“主流”。
とえいじさんは言います。
ロゼの成功によって産地のブランド力は高まりましたが、
その背景には赤や白の長い歴史があります。
ラングドック

南フランスの西側に広がる Languedoc は、フランス最大級のワイン産地です。
地中海沿岸から内陸の丘陵地帯まで広がり、
スペイン国境に近い Roussillon と連続するエリアで
かつては「安価で大量生産」のイメージが強い産地でした。
19世紀、鉄道の発達によりパリへ大量輸送が可能になり、
温暖な気候を活かした高収量ワインが市場を席巻しました。
その後のフィロキセラによる打撃はこの地域でも例外ではなく、
再植樹・構造再編を余儀なくされました。
コム兄のこの地域の印象としても安価でフランスの中では濃い(温暖な)印象の地域。
しかし現在のラングドックはまったく違うと言います。
しっかりと更新していかないとまずいですねぇ。
ラングドックの本質は「多様性」

この地域の鍵は広さ。
- 海沿いの平地
- 石灰質の丘陵
- 標高300〜400mの高地
- ピレネー山脈の影響を受ける冷涼区画
同じラングドックでも条件は大きく異なります。
共通するのは地中海性気候。
日照量が多く乾燥し、ブドウはよく熟す。
ただし内陸や高地では昼夜の寒暖差が生まれ、
酸をしっかり残すことができます。
乾杯 Domaine J. Laurens / Limoux “Le Clos des Demoiselles” Magnum 2022

ラングドックの西端、ピレネーに近いリムーは、
実はフランス最古級のスパークリングの歴史を持つ土地。
標高は約300〜400m。
大西洋の影響も受けるため、南仏の中では比較的冷涼です。
レモンピール、白い花、軽いトースト香。
良く熟した甘やかなブドウの香りにシュナンブランがいい仕事をしているなっていう印象でした。

マグナムなのもあってか、とっても滑らかですいすい飲んでしまいました。
ラングドックのポテンシャルを示す一本ですね。
白① Lionel Boutié / Languedoc “Moon Range” 2024
続いての白はこちら。

温暖産地のシャルドネですが、
収穫をやや早め、酸を保持するスタイルなんだそう。
トロピカルに振り切らず、
白桃や柑橘、ほのかな火打石のニュアンス。
樽の主張は控えめで、
あくまで果実と酸のバランス重視。
南らしい熟度はありながら、重くならないように造られていて
なんだろう、シャルドネってこんな感じにもなるんだねって感じでした。
余談ですが、エチケットに月が描かれていとビオディナミの生産者であることが多いそうです。
是非これからの参考にしてみて下さい。(ニッチ過ぎるw)
料理 大和芋と鱈のブランダードとアプリコット・ピスタチオ・豚ロースのテリーヌ

ブランダードってなんかの必殺技かギリシャ神話に出てきそうな名前ですが
プロヴァンス地方の言葉で「かきまぜたもの」を意味する言葉が由来なんだそうです。
一般的には干し鱈(塩鱈)とジャガイモ、オリーブオイル、牛乳、ニンニクベースにした郷土料理。
今回はディップにしましたがグラタンみたいな仕立てで提供されることも少なくないと思います。
作り方はとっても簡単。

鱈をニンニク、牛乳、ローリエで優しく火を入れつつ、独特の臭みを抜いていきます。
時期的にフレッシュの鱈が手に入りやすいのもあって干し鱈は使いませんでした。
そしてジャガイモではなく大和芋を使いました。(写真撮るの忘れるところだったw)

皮を剥いて蒸した大和芋を粗くつぶしたらこんな感じ。

完全にマッシュせずに芋の味が分かるように粗めにしました。
そこに火を入れた鱈の骨や皮を取り除いて投入。
こちらも粗めにほぐしておきました。
煮汁とオリーブオイルで硬さを調整して出来上がり。
ほら、皆さんもパーティーで作って言いたくなってきたでしょ?
「ブランダードです」って。
柑橘の皮を加えたり、黒コショウを少しふってもいいかもしれません。
テリーヌについての説明は省略しますが、
もし食べたい方がいらっしゃればDeshikaさんで食べられますので是非。
カシー(Cassis)産ワインの特徴
続きましてカシーについて。
どんな産地なんでしょうか。


ラングドックから東へ進み、地中海沿いをたどると
プロヴァンスに入ります。
その中でもひときわ小さく、特異な存在が
Cassis です。
マルセイユのすぐ東。
断崖絶壁の入り江「カランク」に囲まれた港町。
リゾート地としての知名度は高いものの、
ワイン産地としては決して大規模ではありません。
むしろ極めて小さいAOCです。
カシーの地理と気候


カシーの最大の特徴は、立地。
- 石灰岩の断崖
- 海に向かって傾斜する畑
- 常に吹き抜ける海風
日照は強い。
しかし海からの風がブドウを冷やし、乾燥させる。
結果として、
✔ 病害が少ない
✔ 健全な熟度が得られる
✔ 酸を保持できる
という環境が整います。
石灰岩土壌は水はけがよく、
ミネラル感のあるワインを生みます。

カシーの主役は白ワイン
プロヴァンス全体ではロゼが約9割を占めますが、
カシーは少し違います。

このAOCの主役は白ワイン。
主要品種は:
- マルサンヌ
- クレレット
- ユニ・ブラン
マルサンヌは通常、
熟すとオイリーでボリュームが出やすい品種。
しかしカシーでは、
・塩味
・柑橘の皮のニュアンス
・引き締まった酸
がしっかりと現れます。
これは海風と石灰岩の影響が大きいと考えられます。
白② Clos Sainte Magdeleine / Cassis ” Belle Arme” Blanc 2023

とても滑らかな口当たりでエキス分が多いなと思いました。
レモンピールやほんのりアニスのような(個人の感想です)ニュアンスと塩味を感じるような味わいだったように思います。
スーッと入ってくるんだけど口の中でのふくらみといか厚みがある印象でした。
なんていうか奥ゆかしくも人との距離感が上手で懐に入り込んでくるような。
品の良さと人懐っこさが上手く同居しているような人たらしなワインって感じでした。
いいワインですなぁ。

料理 ブイヤベース
やっぱり地中海と言ったらブイヤベースが思い浮かびます。
という事で作りました。

これも案外作り方は簡単なので自作してみるのもいいかもしれません。
需要は無いかと思いますが一応作り方もサクッと紹介しておこうと思います。(ちゃんと作ったよアピールw)
まずは玉葱とセロリをみじん切りにします。
コム兄は2,3ミリで切りますが、ザックリでいいと思います。

オリーブオイルを気持ち多めに加えて水分を飛ばしながら甘みを引き出す様にじっくりと炒めます。
もう少しあめ色になるまで炒めてもいいと思うんですがそこはお好みで。

今回はそこまで濃厚な甘さは必要ないと判断したのでそこそこでトマト、サフラン、白ワインを加えます。
トマトは水煮になっているものを使いました。
もちろんフレッシュでもいいですが色合いは淡くなりますのでご注意を。
軽く炒めて缶詰め臭さを飛ばしたら液体を加えてベースの完成。

具材に魚や貝を使うので水でもいいと思います。
今回は鯛を捌いた時に出た骨でとった出汁を加えました。

味変用にルイユも用意しました。

ルイユはニンニクと唐辛子が効いたサフラン入りのアイオリみたいな感じです。
語弊を恐れずにもっとザックリ言うとスパイシーニンニクマヨネーズ。
バゲットに塗って食べたり、スープに溶かして食べればもうそこは地中海。(行ったことはありませんw)

ロゼ Château Canadel / Bandol Rosé 2024
ブイヤベースに合わせてこちらのバンドールで造られるロゼワインもサーヴされました。

見た目のチャーミングさとは裏腹にしっかりと骨格があるガストロノミックなロゼワイン。(個人の感想です)
先ほどのカシーの味わいというか印象は近いんですけど、こちらの方がより幅広い楽しみ方が出来るかなと思いました。

温度帯も幅広く違った顔をしてくれるので低い温度から初めても良いなと思いました。
軽すぎないしチャーミング過ぎないので最強の食中酒じゃないでしょうか。
カシーもバンドールのロゼも今回のブイヤベースにいい感じにペアリングしてくれたようです。
やっぱりテロワールの共鳴と言いますか、
その地域で昔から楽しまれているクラシックな組み合わせには理由があるんだなと再認識いたしました。
バンドール(Bandol)AOC:地理・品種・味わい

既にバンドールのワインが提供されていますが、
改めてバンドールについて見てみましょう。

Bandol は
プロヴァンス西部、トゥーロンとマルセイユの間に位置するAOC。
1941年にAOC認定。
南仏の中でも比較的早い段階で原産地統制を確立した、
“格式ある”産地です。
地理とテロワール

バンドールの特徴は、
海岸線に極めて近いにもかかわらず、背後に山地を擁する地形構造にあります。

単に「海に近い」「山がある」という視覚的特徴ではなく
海岸線のすぐ背後に山地が迫ることで標高差が生まれ、日没後には気温が速やかに低下します。
さらに、山から海へと流れ下る冷気が空気の対流を促し、日中に蓄積された熱が停滞するのを防ぐ効果があります。
この結果、昼間には地中海性気候のもとで十分な成熟が進みながらも、夜間には果実の呼吸が穏やかになり、酸の分解が過度に進行しない。
なので熱による完熟と、冷却による酸保持が同時に成立する環境が形成されています。
さらにここで重要なのは——とえいじさんは続けます。

ムールヴェードルが完熟できる数少ない場所であること。
ムールヴェードルは晩熟品種。
スペイン原産(モナストレル)で、
・高温
・長い日照
・乾燥
を必要とします。
バンドールはまさにその条件を満たします。
品種構成

バンドールの赤は
ムールヴェードル主体(最低50%、多くは70〜90%)。
補助的に:
- グルナッシュ
- サンソー
ロゼにもムールヴェードルが使われ、
これがバンドール・ロゼの個性を決定づけます。
チャーミングなのに骨格がしっかししているように感じたのはムールヴェードルの影響だったんですね。
しかも青さを感じないのも完熟したブドウが穫れるバンドールならではの味わいですね。
バンドールの赤ワイン

Bandol の赤は、
南フランスの中でも特異な存在です。
プロヴァンス=ロゼの産地というイメージの中で、
バンドールだけは明確に
「長期熟成型の赤」
を生み出します。
なぜ熟成するのか

理由は単純明快。
主役がムールヴェードルだから。

ムールヴェードルは:
・皮が厚い
・タンニンが強い
・晩熟
・還元的に育ちやすい
若いうちは
- 黒系果実
- 野生的ニュアンス
- 動物的要素
- 強いタンニン
しかし時間が経つと、
- ドライハーブ
- 皮革
- トリュフ
- 土のニュアンス
へと変化します。
AOC規定でも赤は
最低18ヶ月熟成が義務付けられています。
つまり、熟成してこそ完成するワインです。
赤①② Lafran-Veyrolles / Mourvèdre Bandol “Bandol Rouge” 2023 & 2016


若い状態と10年熟成させた状態を垂直で味わうことが出来ました。
まずもってコム兄が驚いたのが、2023が思いのほか飲めたこと。
つまり、今飲んでも美味しかったんです。
もっとタンニンがギシギシしていて、ムールヴェードル感が強いんかなと思っていたんです。
でもタンニンの量はあるにしても質感がきめが細かい。
熟度が高いからエキス分があってプラム感たっぷりで甘やかな感じで。
もちろん10年熟成させた方は間違いなく美味いんですよ。間違いなく。
でもまだまだ元気で、縁の色もまだまだ現役っていう感じの色調でした。
23年も美味いけど16年と比較したらもう戻れないっていう声も聞こえてきました。

栽培技術や醸造技術が底上げされているから
若いうちでも飲めるようなワインになってきているんだと思いますが、
キレイに熟成した姿も見てみたいですね。
いやぁ、いい経験でした。
赤③ Château de Pibarnon / Mourvèdre Bandol “Bandol Rouge” 2019

コム兄的にはこちらのワインは何というかより洗練しているような印象を持ちました。
もちろん軽くはないんだけど、重さ一辺倒だけではない感じ。

苺の白い所のニュアンスがあるっていう声も聞こえていたのはこのワインだったんじゃないかと思います。
黒果実が主体だけどセージのようなハーバルさがいいアクセントになっているなぁと思いました。
これあと20年後に飲んだらまた違うんだろうなぁ。(多分待てないw)
料理 イノシシのドーヴ
赤ワインセクションに合わせてイノシシの赤ワイン煮を作りました。

彩りは鬼のように悪いんですけど素朴な感じという事で許してください。
今回使いましたのはイノシシの肩の部分のお肉。
60キロないくらいのオスのイノシシでした。
良く動かす部分という事もあってとっても赤みが強いのが分かるかと思います。
スジも多い部分なんですがコラーゲンを多く含んでいるので美容にもいいですよね。
多分w
幸いオス特有の匂いが無く食べやすいお肉だったように思います。

4,5センチ角に切ったものと香味野菜を一晩赤ワインでマリネします。

翌日肉を取り出して粉をまぶして色を付けるように焼き付けていきます。

この時にまぶした粉がソースの濃度を付けてくれたり、
肉から過度に味が抜けるのを防いでくれます。

マリネしていた野菜も炒めて、ワイン、イノシシの出汁で1時間ほど煮込めば完成。
もちろんもう少し煮て柔らかくしても良いんですけど、
ある程度の噛み応えを残して咀嚼回数を増やすことでバンドールのタンニンとバランスを取ろうと思いました。
後は単純に柔らかくなるのはいいけどソースに味が出てしまってスカスカになってしまうのも嫌ですしね。

それからごぼうもソースで炊いて添えました。
実はブラックオリーブも最後に散らすはずだったんですけど
すっかり忘れて冷蔵庫に佇んでいたいたのは内緒にしておきます。
最後に
いかがでしたでしょうか。
冬に開催するプロヴァンスワイン会の真意を汲み取っていただけましたでしょうか。
まだまだ知らない(自ら進んで選ばない)ワインが沢山あるなと改めて思いましたし、
テロワールや歴史を理解する事でワインの持つ本質に迫る面白さも改めて実感しました。
次回奈良ワイン会はオーストリアがテーマ。
どんなお話が聞けるのか今から楽しみですね。
という事で今回はここまで。
ではまたっっっ!!

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