Circleエピソード11

Circle|店づくりの記録

前回のエピソードでは、

物件取得にかかる想定外のリスクや費用と向き合いながら、自分の中でひとつの覚悟を決めた話を書きました。

正直なところ、あの時は「進む」と決めたものの、不安がなくなったわけではありませんでした。

むしろ現実をちゃんと知ってしまったからこそ、次に進む一歩一歩が少しずつ重たくなっていく感覚があったと思います。

そして今回、その延長線上にある大きな山場——融資の審査に入ることになりました。


“圧”の正体

承継センターの方、商工会、行政書士、そして元喫茶店の関係者を交えた打ち合わせ。

それぞれが専門的な立場から話をしてくれるのはありがたいことなんだけど、

飛び交う言葉のほとんどが聞き慣れないものだった。

契約形態、リスク分担、想定されるトラブル。

どれも間違いなく大事な話だと思う。

でも、それを一気に浴びたとき、頭の中が追いつかなくなった。

理解しようとしてるのに、どこかで処理しきれていない感覚。

「本当に自分にできるのか」

そんな言葉が、ふと頭をよぎった。

もしここで判断を誤ったら、取り返しがつかないかもしれない。

そんな重さも同時に乗ってきていた。

—ただ、後になって分かったことがある。

承継センターの方は別の案件も抱えていて、

もし自分がこの話を見送れば、すぐに次の人に紹介する予定だったらしい。

つまりあの場で提示されていたリスクの中には、

今の自分がそこまで深く背負わなくてもいいものも含まれていた。

ということだった。

もちろん、間違ったことを言われていたわけではない。

ただ、あの場の“圧”には、そういう背景もあった。

それを知ったとき、正直、少しだけホッとした。

後日、商工会方や元喫茶店の方とお話する中で

「あんな意地悪な言い方せんでもええのになと思っていた」

と聞かせていただいた。

とても救われる思いがした。

同時に、あの場で感じた不安を全部「自分の力不足」にしていたことにも気づいた。


日本政策金融公庫との面談

そこから、日本政策金融公庫との面談に向けて準備を進めた。

ちなみに「日本政策金融公庫」とは

政府が100%出資する公的金融機関で、

民間銀行では対応しにくい分野を補完する役割を担っている。

もう少し具体的に言うと、

民間金融機関を補完し、国民生活・中小企業・農林水産業を支えるための政府系金融機関。

中小企業や個人事業主、創業者、農林漁業者などに対し、低金利・長期・無担保などの融資を行っています。

私は今回こちらの日本政策金融公庫(以下公庫という)さんから融資を受けて事業を始めるつもりにしています。

そのために創業計画書というのが必須になってくるのですが、

これに関しては創業スクールでの内容とチャッピーさんとの壁打ちで何とか仕上げました。

その上で創業計画書に書いてある各種数字の根拠を示さなければいけません。

希望融資額の根拠となる各種見積書を揃えたり、

売上予測の数字の根拠を示すために

想定客単価と席数、回転率を掛け合わせて売上予測をはじき出します。

自分で設定しているくせに

「この数字でホンマにうまくいくんだろうか」

という不安は今でも拭いきれません。

もちろん下振れを想定した数字で消極的に書いてはいるんだけど

やっぱり始まってみないと分からないっていうのが正直なところ。

コンセプトをいじると元も子もなくなってしまうし、

本当にバランスが難しいなと改めて思いました。

なんやかんや言うてもやるしかないんですけど。

あとは自己資金の証明のために通帳やNISAの口座の写し、

その他に源泉徴収票や数か月分の給与明細を準備しました。

数字の根拠以外にも自分自身の経歴や、これまでやってきたこと。

資格や得意な事、どんなお店にしたいのか。

頭の中では整理できているつもりでも、「ちゃんと伝わるのか」という不安は最後まで消えなかった。


面談当日

この日は小学校も中学校も新学期のスタートの日だった。

ぽかぽかした天気で、気温は25度。

歩いていると、少し汗ばむくらいの陽気だった。

面談場所は天理市商工会事務所。

本来であれば公庫に出向いて行われるものだが、

今回は創業スクールの時に事務局として担当してくださった方からの紹介案件という事でこのような形になった。

商工会の方が時間に都合をつけて下さって同席してくださった。

本当に心強かった。

なにか口を挟むようなことはなかったが、とても心強かった。

聞かれたことは想定の範囲内だった。

数字の根拠、客単価、営業時間、返済の妥当性、集客方法。

一つ一つ確認されていく。

大きく詰まることはなかった。

自分の言葉で、淀みなく答えられたと思う。

面談の中で飲食店で融資希望額(正しくは設備資金)が500万円を上回る場合は

「生活衛生営業指導センター」からの推薦書が必要になります。

との事だった。

初耳だったし、また新しい機関が登場した。

本来ならこの推薦書を準備したうえで公庫との面談に臨むのが順番としては正しいのだそうだ。

マジかよ。

この推薦書が無いと公庫内で稟議にかける事すらできないという。

オワタ。

こちらの推薦書なしで進めるなら、希望額を500万以下に下げるしかない。

「そうなんすか」

ここで商工会の担当者の方が動いた。

「じゃあ推薦書もらってきたらいけるんでしょ?」

と掛け合っていただいたおかげで時間の猶予を頂けることになった。

ただし、

「やはりこの推薦書が無いと稟議にかけられないというのは変わらないので、連絡して必要書類を揃えて推薦書をもらってきてください。」

という事で公庫との面談は終わった。


ナイアガラの脇

商工会を後にして車に乗り込んだ。

慣れ親しんだ空間に戻り、ふと我に返るとなんだか脇のあたりが冷たい気がする。

脇汗がびっくりするくらい出ていた。

二度見するほどに。

「ああ、こんなに緊張してたんやな」

そのとき初めて、自分の状態を客観的に見た気がした。

面談中は平静を装っていたけど、身体は素直に反応していたのだった。

汗染みが見られていたんじゃないかと思うと急に恥ずかしくなったが、

そんなの気にしていられない。

そのまま、生活衛生指導センターに電話をかけた。

止まっている時間はないと思った。

翌日の15時、アポイントが取れた。

そうと決まればやることは一つ。

必要書類の確認だ。


推薦書

そして翌日、生活衛生指導センターへと向かった。

こちらでは数字の根拠に加えて、店舗の図面の提出も求められた。

どのような機材や環境でやるつもりなのか。

正に衛生に関する部分の確認がなされた。

公庫との面談が先に済んでしまった旨説明すると、

「こちらの方を先にしていただくのが本来の筋道なんですけどね」

と一応念押しされた。

ほんとすみません。

でも、担当の方が優しかったのか比較的すんなり話は進んだ。

後日改めて交付されるとばかり思っていたのだが、

「発行してまいりますので少々お待ちください」

と10分程度で交付いただいた。

仕事ができる方に恵まれて本当にありがたい限りである。

安堵感から来るのか、何なのかわからないザワザワともフワフワとも違う何とも形容しがたい感情とともに帰路についた。


追加書類提出

無事に推薦書を受け取り、追加で求められていた資料も揃えて公庫の担当者に送信した。

送信ボタンを押したあと、少しだけ力が抜けた。

「ああ、ここまで来たんやな」と思った。

ここ数日、ずっと落ち着かなかった。

面談が終わっても、なんとなくソワソワするというか残尿感というか

何かやり残しているような感覚が抜けなかった。

でもそれは、まだ「自分が動けば何かが変わる状態」だったからだと思う。

推薦書をもらい、資料を出し切った今、ようやくその感覚が少し変わった。

やることは、やった。

そう言えるところまで来た。

ここから先は、自分の手を離れる。

担当者が稟議書を作り、組織の中で判断が下される。

結果が出るまで10日から2週間。

長いようで、きっとあっという間だと思う。

そんな中で自分だけが妙に落ち着かなくて、でも確実に前に進んでいる感覚があった。

世の中は、いつも通り動いている。

そして、自分の人生もまた確実に動き始めている。

地主さんとの本契約は、まだこれから。

書類は向こう側で準備が進んでいて、今は待つしかない。

全部を自分でコントロールできるわけではない。

でも、できることと、できないことを分けて、できることを一つずつやる。

それしかないし、そうやってここまで来た。

あとは、結果を待つだけ。

正直、不安はある。

でもそれ以上に、ここまでやってきた実感もある。

この時間も、きっと後から振り返れば、ちゃんと意味のある時間だったと思えるはずだ。


公庫担当者からの連絡

その日のうちに、公庫の担当者から連絡があった。

提出した資料をもとに、これから内部で審議に入るとのことだった。

結果が出るまで、あと少し。

この時間ごと、ちゃんと受け止めておこうと思う。

エピソード12に続く。。。

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