Circle エピソード10

Circle|店づくりの記録

「揃ってきた手応えと、想定外のコスト」

ここにきて、一つの現実を突きつけられた。

物件取得に関する“見えていなかったコスト”の存在だ。

ただ、その話に入る前に少し時間を巻き戻しておきたい。

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—23日の月曜日

金曜に行われる予定の事業承継センターの方や行政書士の先生との打ち合わせに先立ち

妻と子供を連れて元喫茶店を訪れた。

不用品撤去の分別も兼ねて、

住宅部分や店舗のバックヤードも含めて、一通り中を見せてもらった。

妻と子供たちにとっては、これが初めての「現地」。

ここが家になる。

ここで暮らす。

そして、ここで店をやる。

それまでどこか抽象的だったものが、一気に現実の輪郭を持ち始めた瞬間だったと思う。

「ここに住むんだね」

「ここがお店になるんだね」

そんな会話をしながら、自然とワクワクした空気が生まれていた。


—そして25日の水曜日。

今谷さんから、店舗改装の図面が上がってきた。

内容としては、当初提示されていた見積もりの範囲内でしっかりと形にできそうだというもの。

ただ、ここで一つ判断を加えた。

資材高騰などのリスクに備えて、当初は別枠で100万円ほどの予備費を見ていた。

しかし、「公庫の融資においてはエビデンスのない予備費は認められない可能性がある」と、

商工会の方から指摘を受けた。

だからその100万円分をあらかじめ見積もりの中に組み込む形に変更してもらい計画へと調整した。

結果として、住む家のイメージもできて、店舗の改装イメージも具体化してきた。

「いよいよ揃ってきたな」

そんな手応えを感じていたタイミングだった。

―だからこそ、昨日の話は少し意外だった。


金曜日、打ち合わせ。

行政書士、事業承継センター、商工会、元喫茶店のオーナーさん、コム兄というメンバーで打ち合わせは行われた。

どんな内容になるのか詳しい事は聞いていなかった。

もしかしたら契約書の作成とか何かな?と思って印鑑をしのばせて向かった。

ところが始まったのは、今回の事業継承に関する考え得るリスクをテーブルに並べる事だった。

聞いたことのない専門的な単語や、難しい言い回し。

こちとら勉強が苦手で料理人になった口である。

ハンコだけすれば終わるだろうと軽く考えていた自分を呪い殺したくなった。

打ち合わせが終わった後に商工会の方から

「目が点になっていたから大丈夫かなぁと思いながら心配しながら見ていた」

との事だった。(助けてくれよw)

実際会話についていくために必死で頭を回転させた。

借地権だの登記がどうのとか、単に不動産の売買だけではないし、

元喫茶店のオーナーさんとの合意が出来ていても地主さんとの契約がどうのとか。

具体的に言うと物件の譲渡に関する費用とか、

元喫茶店の引っ越しや不用品処分にかかるコスト。

手続きの手数料や書類を整える費用。

それらがじわじわと積み上がり、トータルするとなかなかの破壊力を帯びて襲い掛かってくる。

冷静に考えれば、そりゃそうなのだ。

言葉にしてしまえばシンプルだけど、

これまでの計画の中では、明確には織り込めていなかったのも事実。

正直に言うと、少し面食らった、というのが本音だと思う。

実際に迷ったところでもう戻れない所まで来てしまっているのだから。

もう少し早い段階で分かっていれば、資金の配分や意思決定の順番も変わっていたかもしれない。

ただ。

ただ、だ。

それでも今回の件で得たものは大きい。

一番の収穫は、“判断材料の解像度が一気に上がったこと”だと思っている。

最初に見えていた数字。

第三者を通して見直された現実的なライン。

数字だけではなく契約に関連することもそうだ。

当然のことながらこれらはいずれも、ちゃんとお店が回ることを目的としている。

そのために削っていいものと、削ってはいけないもの。

その線引きが、少しだけクリアになった気がしている。

—とはいえ、現実的なプレッシャーは確実にある。

6月末の退職を控えた状態での意思決定。

冷静に見れば、なかなかに痺れる状況だと思う。

それでも、不思議と「やめよう」という方向には傾いていない。

それはきっと、ここまで積み上げてきたものがあるからだ。

奈良でのワイン会で得た手応え。

少しずつ増えてきた「行きたい」という声。

この場所でやることの具体的なイメージ。

それらが、ただの理想ではなく、“現実として成立しうるもの”に変わってきている。

今回の出来事は、間違いなく一つの分岐点だと思う。

条件だけを見れば、もっと安全な選択肢もあったのかもしれない。

でも、「どこでやるか」「どういう形でやるか」

その両方がここまで噛み合うタイミングは、そう何度も訪れるものではないとも感じている。

Circleは、「背伸びをする場所ではなく、背筋を伸ばす場所でありたい。」

それはお客さんに対してだけじゃなく、自分自身に対しても同じだと思っている。

無理はしない。

でも、逃げない。

その間にある、ぎりぎりのラインを当面選び続けることになりそうだ。


翌、土曜日

打ち合わせ翌日、早速地主さんに連絡をした。

元喫茶店のオーナーさんとも話が進み、契約を進めていく方向で話がまとまった。

その上で改めて私との土地の賃貸契約を交わしてほしい旨を伝えた。

こういうのを「契約を巻く」っていうらしい。(昨日の打ち合わせで覚えた単語の一つだ)

書類の準備に少し時間がかかるとのことで、
実際の手続きまでは2週間ほど待つことになるらしい。

契約内容についても、
現状から大きく変わることはない見込みとのことで、
ひとまずは大きな不確定要素は一つ整理された形になる。

とはいえ、ここで立ち止まるわけにはいかない。

それまでにできることを、一つずつ進めていく。

公庫との面談に向けた資料の調整。
商工会の方へのチェック依頼。

ひと通りの資料はすでに送付して、
あとはフィードバックを待つ段階まできた。

現職の退職に関する書類の作成も進めていかなければならない。

大きな流れの中では、
少しずつではあるけれど、前に進んでいる。

その感覚だけは、今はしっかりと持っておきたい。

エピソード11に続く。

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